耳を掃除していて、「あれ、耳垢が湿っている…もしかしてワキガ体質?」と、ふと気になったことはありませんか。
結論からお伝えすると、耳垢が湿っていることと、ワキガ体質には、たしかに関係があります。ただし「湿っている=100%ワキガ」というわけではありません。この記事では、その関係の仕組みから、自分でできるセルフチェックの方法、日々のケアまでを見ていきます。
そもそも「耳垢が湿っているとワキガ」は本当?

結論から言うと、耳垢が湿っていることと、ワキガ体質には、たしかに関係があるとされており、湿った耳垢を持つ人のうち約8割がワキガ(腋臭症)にあたると報告されています 1)。ただし「湿っている=100%ワキガ」というわけではありません。
「耳垢が湿ってる=ワキガ」というのは、なんとなく聞いたことがある人も多いと思いますが、実際のところどこまで本当なのか。まずは、その意外なつながりから見ていきましょう。
なぜ「耳垢」と「ワキ」が結びつくのか

一見、耳とワキには関係がなさそうですが、この2つを結んでいるのが同じアポクリン汗腺とABCC11遺伝子です。ここでは、2種類の汗腺の違いと、耳垢とワキをつなぐ仕組みを見ていきます。
エクリン汗腺とアポクリン汗腺の違い

私たちの体には、汗を出す腺が2種類あります。エクリン汗腺は全身のほとんどの場所にあって、体温を調節するための汗を出す腺です。ここから出る汗は、水分が中心でサラサラしていて、色もニオイもほとんどありません 2)。
もうひとつがアポクリン汗腺です。こちらはワキの下やデリケートゾーン、そして耳の穴など、体の限られた場所にだけある腺で、脂質やタンパク質など、ニオイのもとになる成分を多く含む汗を出します 3)。ワキガのニオイ、そして湿った耳垢には、主にアポクリン汗腺が関係しています。
耳垢を出す「耳垢腺」は、ワキのアポクリン汗腺の仲間です 4)。耳とワキ、体の中では離れた場所にありますが、同じ種類の腺・同じ仕組みがどちらにも存在しているから、こんな関係が生まれるのです。

耳垢のタイプを決める「ABCC11遺伝子」
耳垢が乾性になるか湿性になるかは、「ABCC11遺伝子」という遺伝子のごく小さな違いによって決まることがわかっています 5)。ABCC11遺伝子とは、アポクリン汗腺の細胞から脂質などを外へ運び出す「排出ポンプ」のような役割を持つ遺伝子のことです。
この遺伝子の違いによってポンプの働き具合が変わり、ポンプが強く働くタイプの人は、においのもととなる成分の分泌が多くなり、湿性耳垢やワキガになりやすくなります。逆にポンプの働きが弱いタイプの人は、分泌が少なくなるため乾性耳垢になります。
つまり、耳垢のタイプは生まれ持った体質のひとつで、自分でコントロールできるものではない、ということです。
自分の耳垢はどっち? 乾性耳垢と湿性耳垢の見分け方

ここまでの話を踏まえて、次は「じゃあ自分の耳垢はどっちなんだろう」を確認していきましょう。
自分の耳垢が湿性タイプなのか乾性タイプなのかは、見た目で見分けられます。湿性タイプは茶色っぽくてネバネバしているのが特徴で、乾性タイプにはそういったベタつきがほとんどありません 6)。耳垢のタイプは、メンデルの法則という遺伝のルールに従って決まる、生まれ持った体質です 5)。
ただし、ここで注意点があります。「耳垢の色でワキガがわかる」と思われがちですが、色(黄〜茶)だけでは判断しきれません。あくまで湿っているかどうか(質感)が手がかりで、色は補助的に見る程度にとどめてください。
耳垢が湿っていても、ワキガとは限りません

「今日たまたま耳垢が湿っていた」からといって、すぐに心配しすぎなくても大丈夫です。逆に、乾いているからといって無縁と言い切れるわけでもありません。両方の"例外"を見ていきます。
湿っていてもワキガではない場合がある
耳垢は、生まれ持った体質以外の理由でも、一時的に湿ることがあります。耳掃除のしすぎでできた小さな傷、外耳炎などの炎症、季節の湿度、イヤホンの長時間使用などが、一時的に耳垢を湿らせる原因として考えられます 7)。もともと乾性タイプだったはずなのに、急に湿って黄色くなり、しかも耳が痛む、といった場合は、炎症や感染が起きているサインかもしれません。その場合は、自己判断せず、医療機関で相談してみるのがおすすめです。
乾いているからワキガの可能性がないと言い切れない理由
逆に、耳垢が乾燥しているから自分はワキガとは無縁と言い切れるかというと、実はそうとも限りません。腋臭症(ワキガ)と診断された79人を対象に遺伝子のタイプを調べた研究では、98.7%にあたる78人は湿性タイプの遺伝子でしたが、残りの1人は乾性タイプの遺伝子だったことが報告されています 8)。耳垢のタイプは、あくまで「強い目安」であって、絶対的な答えではありません。
耳垢の"湿り"より、ニオイのケアに目を向けよう
「耳垢の湿りを治したい」という声も多いのですが、耳垢のタイプは生まれ持った体質(ABCC11)で決まるため、湿り自体を"治す"ものではありません 5)。一方で、気になるニオイのほうは、日常のセルフケアで軽減できます。「体質は変えられないが、ニオイは対処できる」というのが、ここでの結論です。
耳垢以外にも確認できるセルフチェック項目

耳垢だけで判断がつかない、という人も多いと思います。ここからは、耳垢以外にも確認できるポイントと、家でも試せる検査方法を紹介します。
家族にワキガの人がいるか
ワキガ体質は、遺伝的な要素が大きく関わっています 5)。そのため、家族にワキガ体質の人がいるかどうかも、セルフチェックの一つの参考になります。
シャツの黄ばみが気になるか
ワキの汗に含まれる色素成分が、服に黄ばみとして残る原因であることが示唆されています 9)。ワキの部分の黄ばみが気になる、という方は、こちらもセルフチェックの参考にしてみてください。
家でもできる「ガーゼテスト」
「自分は本当にワキガの傾向があるのかどうか」を確かめたいときは、「ガーゼテスト」を試してみましょう。もともとは医療現場で使われている方法ですが、家でも簡単に試せます。
脇にガーゼを挟んでおくだけです。挟む時間はクリニックによって差があり、5〜15分程度が目安のようです 10)。あとは、家族や親しい人にお願いして、ガーゼの匂いを確認してもらいましょう。自分の鼻はにおいに慣れてしまうため、第三者に嗅いでもらうのがポイントです。医療現場では、そのニオイの強さを医師など第三者が次の5段階で評価します 10)。
Stage I: まったく臭わない
Stage II: ガーゼからかろうじてわかる
Stage III: よく嗅げばわかる程度
Stage IV: 横にいてわかる程度
Stage V: 電車などで人を間に挟んでいてもわかる
なお、海外の文献ではStage III以上を治療を考える一つの目安とする記載も見られますが、日本では明確な基準はなく、医師が総合的に判断するのが基本とされています 10)。
自宅で試す場合は、あくまで参考程度に留めてください。というのも、実際にはそれほど強くないニオイを、本人だけがとても強く感じてしまう状態(自己臭恐怖症)もあるためです。自分の感覚だけで判断するのは難しい場合があります。気になる度合いが強いときは、無理に自分で判定しようとせず、一度医療機関で相談するのが安心です 10)。
よくある誤解・気になる疑問

最後に、ここまでの話に関連して、よく聞かれる疑問をまとめて解消しておきます。
耳垢のタイプは途中で変わることはある?
耳垢のタイプそのものは、生まれ持った遺伝子で決まる体質なので、基本的には一生変わらないと考えられています。ただ、「変わったように見える」原因はあります。先ほど触れた通り、耳掃除のしすぎによる傷や、炎症、湿度、イヤホンの使用など、一時的な要因が影響していることが多いようです 7)。
子供の耳垢が湿っていたら将来ワキガになる?
結論からお伝えすると、遺伝子自体はしっかり受け継いでいる可能性が高いです。ただ、まだ体の準備が整っていないだけかもしれません。
アポクリン汗腺(耳垢腺やワキの汗腺)は、生まれたときにはまだ未発達で、ほとんどはたらいていません。それが思春期になると、性ホルモンのひとつであるアンドロゲンの分泌が増え、その刺激を受けて発達し、はたらきはじめると考えられています。実際に、ヒトのアポクリン汗腺には、アンドロゲンを受け取る仕組み(受容体)があり、その活動が分泌と関係していることが報告されています 11)。
だからこそ、遺伝的にはワキガ体質(湿性タイプ)を持っていても、アポクリン汗腺が育つまでは、耳垢が乾いて見えたり、ニオイがまだ目立たなかったりすることがあるようです。思春期になってアポクリン汗腺の発達が進むと、少しずつ耳垢が湿ってきたり、ニオイが感じられるようになったりすることもあります 11)。
セルフチェックの後にできること

ここまでのセルフチェックで、ワキガ体質かもしれないと感じた方も、まだよく分からないという方もいると思います。ここでは、そんな今の状態別に、次にできることを整理していきます。
今日からできるセルフケアの基本
ケアの基本は、2つの役割を組み合わせることです。制汗剤で汗の量を抑え、殺菌成分を含むデオドラントでにおいの原因菌のはたらきを抑える。この「Wアプローチ」が、手軽に始められる出発点です。
セルフケアで改善しない場合の治療の選択肢
セルフケアだけでは十分な変化を感じられない場合、医療機関での治療という選択肢もあります。具体的には、外用薬による治療、ボトックス注射、ミラドライのような機器を使った治療、手術療法などが挙げられます。
まとめと次の一歩

耳垢が湿っていることはワキガ体質を見分けるひとつの目安にはなりますが、それだけで100%判断できるものではありません。あくまで参考情報のひとつとして捉え、他のセルフチェック項目と合わせて総合的に見ていくことが大切です。
参考文献
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