「もしかして、これってワキガなのかな」。自分の脇のにおいや見た目が気になって、このページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。ひとりで悩まず、まずは一緒に確認していきましょう。ここでは、見た目からわかりやすいワキガの特徴と、見た目以外でできるセルフチェックを紹介します。
ワキガは見た目だけで本当にわかる?
「見た目だけで本当にワキガかどうかわかるのでは」と思う方もいるかもしれません。ですが、結論からお伝えすると、外見や脇の状態といった見た目だけで、ワキガかどうかを断定することはできません。
ただし、いくつかの特徴が当てはまるほど、ワキガである可能性は高くなります。実際に医療の現場でも、においの強さを段階的に評価するグレード評価法や、体質に関わる遺伝子を調べる方法など、専門的な評価が使われています。つまり、見た目はあくまで「気づくきっかけ」であり、確定的な判断は専門医にゆだねるものです。このページでは、見た目でわかりやすい特徴と、見た目以外でできるセルフチェックを紹介します。
ワキガの可能性がある見た目の特徴
ワキガかもしれない見た目の特徴にはいくつか種類があり、特徴ごとに「どのくらい参考になるか」には差があります。ここでは代表的な3つを見ていきましょう。
衣類に黄色いシミがつく

「気づいたら脇の部分に黄色いシミが」というのは、意外と見落とされがちなサインです。ワキガの原因であるアポクリン腺から出る汗には「リポフスチン」という色素成分が含まれており、これが衣類を黄ばませます。
ワキガの方は、そうでない方に比べてアポクリン腺の数や大きさが多く、分泌量も多くなることがあるため、黄色いシミが目立ちやすい傾向があります。白い衣類や下着の脇部分にシミがつきやすいのも、同じ理由によるものです。心当たりのある方は、次の特徴もあわせて確認してみてください。
耳垢が湿っている

耳垢のタイプを気にしたことがない方も多いかもしれません。実は、耳垢が乾いたタイプではなく湿ったタイプの場合、ワキガと関連があることが遺伝子研究からわかっています。ワキガと診断された人の98.7%が、湿性耳垢に対応する遺伝子型を持っていたと報告されています 2)。
見分け方はシンプルです。湿性耳垢は茶色〜キャラメル状でネバネバしており、乾性耳垢はカサカサしているのが特徴です。ただし色だけでは判断しきれないため、湿っているかどうか(質感)を手がかりにしてください。
なお、耳垢は体質以外の理由でも一時的に湿ることがあります。耳掃除のしすぎや外耳炎、季節の湿度、イヤホンの長時間使用などでも湿って見えることがあり、逆に乾性でもワキガのことがまれにあります。耳垢は「強い手がかり」ではありますが、それだけで確定できるものではありません。
脇毛が濃い

脇毛が濃い、または1つの毛穴から複数の毛が生えているタイプの場合、皮下のアポクリン腺のサイズが大きい、あるいは密集している傾向があるという報告があります 3)。ただし、これは手術例を対象にした研究の結果です。脇毛の濃さだけでワキガと判断できるわけではないため、ひとつの参考程度に捉えてください。
見た目以外でのセルフチェック
見た目以外にも、日々の暮らしの中で気づける特徴や、自宅で手軽にできるチェック方法があります。ひとつの特徴だけで決めつけず、いろいろな角度から見てみましょう。
家族にワキガの人がいる
「そういえば親も」と思い当たる方もいるかもしれません。ワキガの体質には、遺伝的な要因が関わっているとされています 4)。この体質に関わる遺伝子(ABCC11)は、アポクリン腺の細胞内で、においのもとになる成分を運ぶ働きに関係しており、その働き方の違いによって分泌量に差が出ると考えられています 5)。
つまり、家族に同じような体質の人がいる場合、それは偶然ではなく、体質のつながりを示すひとつの手がかりになり得ます。遺伝の仕組みや遺伝する確率については、ワキガの遺伝の記事もあわせてご覧ください。
においを感じる
自分では気づきにくくても、周囲の人の何気ない一言で気づくこともあります。
補足すると、アポクリン腺から出た汗そのものは、出たばかりのときはほとんど無臭です。これを皮膚の常在菌が分解して初めて、ワキガ特有のにおいが生まれます 2)。だからこそ、どんな菌がいるかが、においの出方を大きく左右します。
実際に、ワキガのある人とそうでない人とでは、脇の皮膚にすんでいる菌の種類が違うことが報告されています 6)。においの少ない人の肌には、おもに「ブドウ球菌」と呼ばれる菌が多い一方、ワキガのある人の肌では「コリネバクテリウム」や「アナエロコッカス」といった別の菌の割合が高いとされています 6)。これらの菌が、アポクリン腺から出る脂質などを分解することで、においのもとになる物質が作られると言われています 6)。
同じ研究では、ワキガのある人の脇の皮膚が中性寄りのpHに傾く傾向があり、これが原因菌にとって繁殖しやすい環境になっている可能性も指摘されています 6)。つまり、においの強さは体質だけでなく、そこにすむ菌との組み合わせで決まってくるということです。
一年中においが気になる
夏だけの悩みと思われがちですが、実はそうとも限りません。体温調節のための汗(エクリン腺から出る汗)は夏の暑さや運動で増えますが、ワキガのにおいのもとになる汗(アポクリン腺から出る汗)は、精神的なストレスや緊張、ホルモンの影響によって増えるとされています 7)。緊張やストレスを感じると、自律神経(交感神経)を介してアポクリン腺が刺激され、においのもとの分泌が促されるためです 7)。
つまり、季節や気温に関係なく分泌が起こり得るということです。夏だけでなく一年を通してにおいが気になる場合は、ひとつの手がかりになります。
自宅でできるガーゼテスト

「試してみたい」という方に向けて、自宅でできる方法も紹介します。医療の現場では、脇に挟んだガーゼのにおいの強さを段階的に評価する「ガーゼテスト法」が使われています。腋窩に5分間ガーゼを挟み、医療者がにおいを次の5段階で評価します 1)。
レベル1: ガーゼからにおいがしない
レベル2: わずかににおいがする
レベル3: 鼻にガーゼを近づけるとにおいがする
レベル4: 鼻に近づけなくてもにおいがする
レベル5: ガーゼを手に持っただけでもにおいがする
一般に、レベル3以上が治療を検討する目安のひとつとされています 1)。自宅でも似た形で試すことはできますが、この評価はもともと主観的な判断によるもので、これだけで確定的な診断はできません。
また、自分の感覚だけで判断するのは難しいものです。実際にはそれほど強くないにおいを、本人だけが強く感じてしまう状態(自己臭恐怖症)もあります。気になる度合いが強いときは、無理に自分で判定しようとせず、専門医に相談するのが安心です。
簡単にできるセルフケア
ここまで紹介したサインで気になる点があった方に向けて、今日から試せるセルフケアの方向性を紹介します。
セルフケアには、大きく2つの方向があります。汗そのものを抑える「制汗」と、においのもとになる菌に対処する「殺菌・デオドラント」です。この両方を組み合わせる「Wアプローチ」が基本になります。ひとつずつ、無理のない範囲で取り入れてみてください。
洗い方を見直す
抗菌成分を配合した石鹸で脇を清潔に保つことは、においの原因菌を減らすセルフケアとして紹介されています 8)。ただし、ゴシゴシ洗うのは逆効果になることがあります。洗いすぎは肌のバリア機能を乱し、かえって菌が繁殖しやすい環境をつくってしまうとされています 8)。
泡でやさしく包み込むように洗うことを意識してみてください。
脇毛を整える
「毛を剃るだけで変わるのか」と思う方もいるかもしれません。脇毛を処理して菌がとどまりにくい状態にすることは、においの原因菌を減らすセルフケアのひとつとして紹介されています 10)。脇毛が多い状態は汗や皮脂を毛にとどめやすく、菌にとって繁殖しやすい環境になりやすいためだとされています 10)。
カミソリでの自己処理や、脱毛での対応も選択肢のひとつです。
汗を抑えるケアを取り入れる(制汗)
塩化アルミニウムなど、汗腺の出口をふさぐ働きを持つ成分を使ったケアは、汗そのものの分泌を抑える方向のセルフケアとして紹介されています 8)。就寝前など脇が完全に乾いた状態で塗布し、翌朝洗い流すという使い方が一般的とされています 8)。
肌に合う・合わないには個人差があるため、様子を見ながら取り入れてみてください。
デオドラントで菌に対処する(殺菌)
デオドラント剤は、においの原因菌の増殖を抑えたり、においを吸着したり、香りでにおいを目立たなくしたりするはたらきがあるとされています 8)。制汗剤が「汗」に、デオドラントが「菌」に対応するので、両方を使い分けると、においをコントロールしやすくなります。
ただし、こうしたはたらきは一時的とされ、毎日のケアを続けることが基本です 8)。
衣類の素材を選ぶ
「いつも同じ服だとにおいが気になる」という方は、素材を見直すのもひとつの方法です。綿やウール、シルクなど通気性の良い天然繊維の衣類を選ぶことは、衣服へのにおい移りやにおいのこもりを防ぐセルフケアとして紹介されています 9)。合成繊維は汗のにおい成分を吸着・保持しやすく、通気性が悪いために菌が繁殖しやすいとされているためです 9)。
病院に相談すべきタイミングの判断基準
セルフケアを試しても気になる状態が続く場合や、日常生活や周りの人への影響を感じる場合、周囲から指摘を受けて自分だけでは判断がつかない場合は、無理に自己判断を続けず、病院に相談することも選択肢のひとつです。
セルフケアで改善しない場合
制汗剤をこまめに塗り直したり、衣類をこまめに替えたり。先ほど紹介したセルフケアをひと通り試しても、においの強さや感じ方があまり変わらない。そんなときは、体質による部分が大きい可能性があります。
「まだ頑張りが足りないのかな」と自分を責める必要はありません。ひとりで抱え込まず、専門医に相談してみましょう。
人前に出るのが怖い
「電車のつり革に手を伸ばすのをためらう」「会議中に腕を上げる場面をなんとなく避けてしまう」「夏でも長袖を手放せない」。においや見た目が気になるあまり、こうして無意識のうちに行動が制限されていないでしょうか。
人前に出るのが怖いと感じるほど日常生活や人との関わりに影響が出ている場合も、病院に相談するタイミングのひとつと考えてよいでしょう。
周囲の人から指摘を受けた場合
家族から「ちょっとにおうかも」とさりげなく言われた、友人のふとした反応が気になった。そうした指摘を受けた場合や、自分だけでは程度の判断がつかない場合も、専門医の評価を受けることで気持ちが整理しやすくなります。
「指摘された=重症」というわけでは決してありません。専門家に見てもらうことは、今の自分の状態を客観的に知るための、心強い一歩になります。
まとめ
今回紹介した見た目の特徴(衣類の黄色いシミ・耳垢が湿っている・脇毛が濃いなど)は、どれも単独で確定できる材料ではありませんが、いくつか重なるほどワキガの可能性を考えるきっかけになります 1)2)。
大切なのは「これに当てはまるから確定」ではなく、仕組みを知ったうえで、気になる場合は専門医への相談も検討することです。ひとりで抱え込まず、次の一歩を選んでいきましょう。
参考文献
稲葉義方.「腋臭症の診断と治療戦略」Derma, 118: 86-92, 2006(グレード評価法 Stage Ⅰ〜Ⅴ)
Nakano, M., Niikawa, N., Yoshiura, K. I., et al.(2009). "A strong association of axillary osmidrosis with the wet earwax type determined by genotyping of the ABCC11 gene." BMC Genetics, 10:42.
Wu, W. H., et al. "Effectiveness and complications of subdermal excision of apocrine glands in 206 cases with axillary osmidrosis." Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery(JPRAS)※書誌情報は要確認
Yoshiura, K. I., et al.(2006). "A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type." Nature Genetics, 38(3), 324–330. doi: 10.1038/ng1733.
Toyoda, Y., Takada, T., Gomi, T., Ishikawa, T., Suzuki, H., et al.(2017). "Clinical and Molecular Evidence of ABCC11 Protein Expression in Axillary Apocrine Glands of Patients with Axillary Osmidrosis." International Journal of Molecular Sciences, 18(2), 417. doi: 10.3390/ijms18020417.
"Microecological investigation and comparison of two clinical methods to evaluate axillary osmidrosis."(PubMed / PMC7533492)※著者・誌名は要確認
日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン」(エクリン腺・アポクリン腺の機序/塩化アルミニウム外用)
Teerasumran, P., Velliou, E., Bai, S., & Cai, Q.(2023). "Deodorants and antiperspirants: New trends in their active agents and testing methods." International Journal of Cosmetic Science, 45(4), 426–443. doi: 10.1111/ics.12852.
Callewaert, C., De Maeseneire, E., Kerckhof, F. M., Verliefde, A., Van de Wiele, T., & Boon, N.(2014). "Microbial Odor Profile of Polyester and Cotton Clothes after a Fitness Session." Applied and Environmental Microbiology, 80(21), 6611–6619. doi: 10.1128/AEM.01422-14. PMID: 25172865.
Lanzalaco, A., Vanoosthuyze, K., Stark, C., et al.(2016). "A comparative clinical study of different hair removal procedures and their impact on axillary odor reduction in men." Journal of Cosmetic Dermatology, 15(1), 58–65. doi: 10.1111/jocd.12197. PMID: 26663394.



